Chap.5 The Old Story

 ロウェナ・レイブンクローは賢い魔女でした。知恵を授けるのに惜しみなく、3人の友と共にホグワーツを創りました。
 しかし、どんなに聡明で古今の知恵に長けていても、彼女にも老いと病は訪れます。ベッドに伏せるレイブンクローの元に教え子たちが見舞いにきます。はたから見れば、教師冥利につきる幸せな光景なのでしょう。ですがレイブンクローには、弟子たちでは埋められない孤独を抱えていました。
 娘のヘレナのことです。ヘレナの行方はある日突然家を出てからようとして知れません。

「私が探してきましょう」と1人の弟子が訪れました。

 レイブンクローは驚きました。娘に会いたいと誰にも言っていなかったからです。

「なぜ?」
「寂しそうでしたから」
「お前が探しに行くというのか。私は男爵に頼もうとしていた。あやつはヘレナにまだ惚れているから、どのような困難があろうと必ずや見つけ出すだろう」
「だからこそ、男爵に行かせてはなりません。ヘレナはあれを振りました。振った男の説得に応じると思いですか?」

 しかしレイブンクローは納得しません。弟子はさらに言いました。

「愛はたやすく憎しみに変わります。男爵はカッとしやすい男。一度ならず二度も振られたらどうなるか。どうか私に行かせてください」

 レイブンクローは頷きました。
 そうして、弟子が旅立ちの準備をしていた時です。弟子の家に男爵がきました。

「ヘレナを探しに行くそうだな」と男爵は言いました。

 弟子が帰った後レイブンクローは、男爵にヘレナを探すよう頼んだのです。1人より2人で探した方が確実だと考えたからでした。

「ヘレナは私のものだ。お前には渡さない」

 男爵はナイフで弟子を刺し殺しました。
 その後、男爵は、レイブンクローが考えた通りヘレナを見つけ出しました。そして意のままにならないヘレナを殺したのです。
 事切れたヘレナを見た男爵は、自分のやったことを後悔して自殺したといいます。
 レイブンクローは娘と会えました。殺されたヘレナが、ゴーストになって戻ってきたからです。
 レイブンクローは娘と弟子の死を嘆きました。

「私がお前の言葉を聞いていたら、こんな悲劇は起きなかったのに」

 ローブを留めていたブローチを外します。青いサファイアと金の留め金、レイブンクローの寮の色です。レイブンクローは、弟子の墓にそのブローチをそなえました。